守りたい 北方領土の貴重な自然環境







 北方領土は,北海道北東部の択捉島,国後島,歯舞諸島,色丹島をさす。総面積は,5,000平方キロメートル弱で,福岡県の面積とほぼ同じ大きさ。第二次世界大戦で日本が敗れたのを機に1945年から旧ソ連が占拠した。これに対して,日本は,これらの島は,日本固有の領土であり,1951年のサンフランシスコ平和条約で放棄した千島列島の中には含まれないと主張し,現在もロシア連邦に返還を求めている。
 一方,ロシアにおいては,択捉島,国後島,歯舞諸島,色丹島の北方四島は,現在のロシア連邦を構成する89の「連邦構成主体」(日本でいう地方自治体)のうちサハリン州に属している。
 サハリン州は,ユジノサハリンスク市と17の地区の18行政区から成っており,そのうち,歯舞諸島,色丹島,国後島は,南クリル地区に属するユジノクリリスク町,ゴロブニノ村,シコタン村の1町2村に,択捉島,得撫島,新知町は,クリル地区に属するクリリスク市,ブレベスニク村,レイドボ村の1地区内市2村の行政区分に入っている。
 北方四島は,自然豊かな環境に恵まれ,ロシアは,1984年に,国後島の東部を中心とした面積650平方キロメートルからなる地域をサハリン州では,唯一の国立自然保護区(クリリスキー)に,択捉島においても,島の中央部から以西を自然保護区に設定している。
 また,貴重な動植物も数多く生息している。植物については,トドマツ,エゾマツ,カラマツなどからなる森林が,択捉島で面積の8割,国後島で6割,色丹島では2割を占めており,国後島には,883種類,択捉島には741種類,色丹島には701種類の多様な植物が生息しているといわれている。
 一方,動物については,鳥類が234種類,哺乳類が49種類,爬虫類が4種類,そして,両生類が3種類,生息している。これらの中には,ヒグマ,クロテン,ミンク,アシカ,シマフクロウなどの希少生物も生息している。
 わが国は,長年,北方領土の返還をロシア側に求めてきたが,北方領土の貴重な自然環境の保護をより適切な方法で管理していきたいという視点も忘れてはならない。
 もし仮に,ユネスコ世界遺産への登録が望ましい物件が北方領土の内外にあるとするならば, 日本とロシアの国境をまたぐ物件として,ユネスコに共同推薦していくことも考えられるであろう。


参考文献 「誇れる郷土ガイド −東日本編ー」「世界遺産ガイド −北欧・東欧・CIS編ー」
        「環日本海エリア・ガイド」「世界遺産Q&A −世界遺産化への道しるべー」 ,
        「世界遺産ガイド −世界遺産条約編−」

















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